「ションヘル織機」による物作り
今回はEYCKの商品を作成するのに欠かすことの出来ない【ションヘル織機】についてお伝えしたいと思います。
ションヘル織機は、高速自動織機が出来るまで、主に明治大正期~1960年代頃まで主力で使われていた旧式の織機で、縦糸の間を横糸を持つシャトルが往復する仕組みになっています。
ションヘル織機は、繊維をピンと張って織る高速汎用織機に比べて、低速でじっくりと織り上げ、繊維への負荷を極力少なく織物自体を立体的にすることができるため、手織りの優しい感覚に近く、手触りが柔らかい風合いのあるテキスタイルを織り上げることが出来ます。実際に高速汎用織機より、1反(約50M)の生地を織るのに数メートル程余分に糸を使用します。その差が、生地の独特な膨らみとナチュラルなストレッチ性を表現し、仕立て映えがよく着心地のよいテキスタイルになります。
また、太さが極端に違う糸を同じテキスタイル内に織り込むことができることや形状が複雑な糸を織ることが出来るので表情がとても豊かなテキスタイルを作成することもできます。EYCKで展開する表情豊かなファンシーなツィードはこのションヘル織機で製織しています
しかし、その分生産性は低く、1日に織れる長さは約10m〜20m程と、通常使われている高速汎用織機の約1/5〜1/10程度しか生産できない、極めて生産効率の低いローテクマシンです。
現在では、織機メーカーもその製造はしておらず、メーカーによるメンテナンスはもちろんのこと、部品の供給すら行われていません。世界的に現存する台数が少なく、使いこなせる職人も少ないことからとても希少な織機です。
織機の細部まで構造を理解した職人が、自らの知識でメンテナンスを行い、破損した部品は他の織機から転用するか手作りで補うしか無く、維持することも大変苦労しています。
現存する工業型機機の中で歴史が最も古く、そこには時代を超えて紡いできた技術があります。希少で手織りに近いローテクノロジーだからこそ出来るプロダクトを、EYCKを通じてできるだけ多くのお客様にお届けしていきたいと考えています。